入札金額の決め方|原価・経費・利益と税の扱いを仮の計算例で解説

公式情報の最終確認:2026年10月20日

入札額を考えるとき、過去の落札価格だけを見て「もう少し安くすればよい」と判断すると、自社の費用を回収できないおそれがあります。まず仕様書を履行するための原価を積み上げ、利益と資金負担を確認することが出発点です。

この記事は、自社で独立して価格を検討するための実務上の整理です。仮の数字は計算方法の説明用であり、相場、推奨利益率、落札できる価格を示すものではありません。実際の入札書記載額と税の扱いは、当該案件の説明書に従ってください。

この記事で分かること

計算前に、総価・単価・対象期間・税を確認する

入札書へ記載する額が、契約期間全体の総価なのか、月額なのか、1回・1個などの単価なのかを確認します。同じ作業でも、年間総額と月額を取り違えれば、原価の計算が正しくても提出額が変わってしまいます。数量が予定の場合は、売上や発注量が保証されるかも別に確認します。

落札・契約の際に消費税等を加算する方式、記載する価格の単位、端数処理、複数品目の税率等も説明書を読みます。

多くの公共入札では、課税事業者か免税事業者かにかかわらず、契約希望金額から消費税等相当額を除いた金額を入札書に記載する方式が採用されています。ただし、すべての案件に共通するものではありません。入札書に記載する金額は、当該案件の入札公告・入札説明書に従ってください。

免税事業者なら常に税込の金額を書けばよい、という理解はできません。税抜の採算計算、実際の税負担、入札書の記載ルールを分けて確認してください。

仕様書を読み、直接費と管理・共通経費を拾う

現場で使う材料や作業者の賃金だけでなく、準備、移動、責任者、報告、検査対応、機器の損耗、運搬、会社負担の保険等を、条件に応じて整理します。代表者が自分で働く場合も、その時間を継続的に無償と扱うと、従業員へ引き継ぐときや他の仕事との比較ができません。

自社の見積表では、各費目に「数量×単価」「工数×時間当たり費用」などの根拠を付けます。共通経費を配賦する場合は、別の費目へ既に含めた金額を二重に加えないようにします。機械は今回分の使用・損耗と購入時の資金支出を分けて考えます。

業務条件を都合よく省略して利益を作らないことも大切です。必要な人員や安全対応、法令上必要な費用を確認し、仕入先等の見積りには有効期限・条件・納期も付けて保存します。物価や人員条件が変わった場合は、以前の単価を再点検してください。

仮の原価82万円から、必要な売上を計算してみる

以下は一つの委託業務を想定した説明用の仮例です。各金額は消費税を除く社内管理用の仮定とし、工事積算の標準費率や公的な労務単価を示していません。実際には作業量・地域・賃金・保険・取引条件等から計算します。

説明用の原価集計例

スマートフォンでは表を左右にスクロールできます。

費目仮の金額計上するものの例
現場作業の人件費480,000円必要な人数・時間から積み上げる。
法定福利・移動・準備等120,000円会社負担分と作業外の必要費用。
資機材・消耗品等70,000円使用分・損耗・消耗品等。
管理・報告等80,000円調整、責任者、報告、検査対応等。
共通経費の配賦50,000円他の費目との二重計上を避ける。
予備費20,000円想定する変動と根拠を残す。
計算対象の総費用820,000円上記の合計。

予備費は、未確認の仕様や無制限の追加作業を一括して引き受ける代わりにはなりません。

仮にこの費用を差し引いた残りを売上の20%確保したいとすると、計算は「820,000円 ÷(1-0.20)=1,025,000円」です。残りは205,000円となり、205,000円÷1,025,000円=20%になります。ここでは説明のため、上表の総費用を回収した後の比率を設定しています。会計上の粗利益率と必ず同じ指標になるわけではありません。

この1,025,000円が、そのまま提出できる入札額になるとは限りません。案件の価格記載ルールや価格条件、実際に見込む税負担、資金、社内の承認を改めて確認します。

粗利率と、原価への上乗せ率は同じではない

原価100に20%を上乗せすると売価は120で、利益20を売価120で割った比率は約16.7%です。売価に対する20%の利益を確保したいなら、原価100÷0.8=125になります。割合の分母を揃えないと、考えていた利益と計算結果がずれます。

先ほどの82万円に20%を単純に上乗せする方法では984,000円となり、差額164,000円の売上に対する比率は約16.7%です。「粗利率20%」と「原価に20%上乗せ」を、社内の見積表で同じ欄にしないようにしましょう。

また、会計上の売上原価に何を含めるかと、案件判断のための総費用に何を含めるかは違う場合があります。比較するときは、現場原価だけの粗利なのか、共通経費を引いた残りなのかを明記します。利益率の名称だけで、十分な採算があると判断しないことが大切です。

税を加算する仮例と、資金繰りを分けて確認する

説明用に「入札書には税抜総額を記載し、契約時に10%を加算する」と指定された案件を仮定します。1,025,000円を記載するなら、加算額は102,500円、契約額は1,127,500円です。これは指定を置いた計算例であり、すべての入札に使う一律の計算ではありません。

請求や税務上の実際の扱いは、取引内容・課税区分等によって確認が必要です。入札書の税計算を、そのまま自社の税負担や手取り利益の計算と混同しないでください。

利益が出る計算でも、入金より先に給与・仕入・保証等を支払うと資金が不足する場合があります。契約保証金は、費用となる保証料等と、返還等の条件がある預け金を区別します。月ごとの収入と支出を並べ、必要な立替資金も確認してください。

予定価格・最低制限価格・低入札価格調査を確認する

自社が履行できる価格と、発注者側の価格条件の両方が必要です。予定価格や最低制限価格がある場合、低入札価格調査の対象になる場合など、制度と落札方式を公告・説明書で確認します。公開されていない価格を推測できれば採算が取れる、という関係ではありません。

神奈川県の物品・一般委託等の案内では、最低制限価格の対象業務と、その価格未満の入札の扱いを定めています。デジタル庁の低入札価格調査の案内では、該当時に積算根拠や履行体制等の提出・説明を求める場合があることを示しています。それぞれの適用範囲を、他の機関・契約区分へ広げて理解しないでください。

過去の落札結果は、業務量・期間・品質・条件が同じかを確かめて参考にします。他社の金額だけを基準にせず、自社の原価に差がある理由を検討します。自社で合理的に履行できない価格なら、参加を見送る判断も必要です。

価格は独立して決め、提出前に数字の意味を確認する

公正取引委員会は、事業者が事前に相談して受注者を決める入札談合を、不当な取引制限の一つとして説明しています。競争相手との受注調整や入札額のすり合わせを行わず、自社の費用・能力・契約条件に基づいて独立して判断します。

金額を決裁・提出する前の確認

  • □ 総価・単価・対象期間と、数量の前提が合っている。
  • □ 必要な作業・人員・経費と税負担を確認した。
  • □ 利益の計算で、費用の範囲と割合の分母を揃えた。
  • □ 最低制限価格等の制度と、資金負担を確認した。
  • □ 金額・桁・単位・端数・添付内訳書の整合を確認した。
  • □ 社内の承認を受け、提出後の控えを保存する担当を決めた。

この確認は社内用の整理例です。入札書・内訳書等は発注機関の指定様式と記載方法に従って作成します。

よくある疑問

過去の落札額より安ければ、落札できますか?

保証されません。仕様・参加条件・価格条件・落札方式等を満たす必要があり、過去案件と今回の作業量や条件も異なる場合があります。

自分で作業するなら、人件費をゼロにしてよいですか?

継続的な採算判断では、自分の稼働時間にも費用を置いて検討することが有用です。現金支出がないことと、その時間に負担や価値がないことは別です。

免税事業者なら、税を含めた金額を記載しますか?

一律には判断できません。課税・免税にかかわらず所定の方法で記載するよう定める案件もあります。必ず当該入札説明書の税・端数等の指定を確認します。

公式資料・確認日

確認日:2026年10月20日。制度の要件・受付状況・様式は変更される場合があります。具体的な手続きでは、対象年度・申請区分に対応する最新の公式案内をご確認ください。

入札参加資格の申請をご相談の方へ

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資格取得は受注を保証するものではありません。電子証明書の取得、端末設定、案件検索、価格設定、個別案件の参加申請・応札等は、基本の資格申請代行とは別の業務です。

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投稿者プロフィール

大谷 英久
大谷 英久あきざくら行政書士事務所 代表行政書士
30年以上の行政経験を生かし、許認可・入札参加資格申請、相続・遺言などを支援しています。

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